大学序列を実感

(留学生を担当する課は学術国際局(当時)にあったが、業務は大学における留学生受け入れや日本人学生の海外留学に関するものであったので、本(高等教育)欄で扱う。)

 在籍当時、留学生関係業務にはODA(政府開発援助)が適用され、20世紀初頭までに留学生受け入れを欧米並みの10万人とするという「留学生受け入れ10万人計画」の達成に積極的に取り組んでいた。その一環として、留学生受け入れ業務の一元化・効率化を進めるため、留学生受け入れに積極的な大学には中核組織である留学生課等の組織を設けることで、取り組みを後押しするという事業を進めていた。 

 ただし、予算の制約がある中では全国の大学に一斉に措置することは到底できないため、優先順位を付すことにならざるを得ない。その際、公平性を期すために客観的な基準に従って判断を行う必要があるのは当然だが、単純に在籍者数の多寡のみを基準としたのでは、都市部の大学が有利になるのは明らかだ。大都市での生活を希望する者が多いのは留学生も変わらない。そもそも、留学生が来日前に知っている日本の大学名や都市名はごく限られており、名前を知っている都市を学業や生活の場にしたいと希望する学生が多いのは当然である(さらに、同じ名の学部を擁している複数の大学間の違い・特色が明確でないため、自分の知らない土地にある大学を検索・選択しようとすること自体が難しいという事情もある)。

 即ち、留学生数には大学の努力とは別の要因が大きく影響していると考えられる。そこで、数値のみを基準とするのは適当でないとして、留学生数と日本人学生数との比率や過去数年間の留学生数の伸び率・大学がある地元の地域における留学生受け入れ体制や取り組み状況等を総合的に判断して優先順位を策定した。

 それを基に各大学に担当組織の設置について打診していったが、その中の回答に驚くものがあった。国の掲げた目標の実現に向け、各大学が様々な努力を進めている事を前提にして、国がそれを支援しようという取り組みであったので、どの大学でも喜んで設置を希望すると思っていた。ところが、「希望しない」という大学が複数あったのだ。いずれも上述の基準に基づき、留学生受け入れに積極的に取り組み、十分な成果が上がっていると判断された大学である。

 しかも、地方にある中小規模で、担当する職員が多くいる訳でもない大学ばかりだ。それがなぜ設置の打診を断るのか理由を尋ねたところ、「もっと規模の大きい大学でまだ措置されていないところがあるのに、自分のところのような大学が先に設置されるよう希望することなど考えられない」ということだった。この回答に対して、全国的に見ても優れていると言える取り組みを行っている上、立派な実績も挙げているので遠慮することはない、小さくても頑張った大学がそれに相応しい評価・措置を受けるのは当然だ、と何度説明しても考えは変わらず、「当大学に設置されたことは他校にすぐ分かるので、後で<なぜお前のところへ、なのだ><何をしたのだ>と非難・中傷されることは避けたい」と述べる者さえいた。

 このような反応がある一方で、打診・説得しているのとは別の大学の担当者が「次は順番として当然、ウチに措置されるのだろう?」と言ってきたのには更に驚いた。

 確かにその大学の留学生数は多かったが、学生規模に比した割合も、近年の増加率も高くないため、措置の対象としてリストアップしておらず、相談の予定も立てていなかった。それが突然、現れてこの言動である。しかも、国立大学を担当する中核課である大学課(当時)にはアポイントメントを取っていたが、約束の時間に先方の都合が悪くなったため、図らずも時間が空いたので次いでに寄ってみた、という。道理で説明の資料等ももたず、何の準備もなしに来た訳だと合点がいったし、それほど真剣に考えた上での相談でもないのだろうと納得はした。

 しかし、努力しても小さな大学は当然の権利を行使できずに耐え、反面、大きな大学は実績がなくても規模から当然のように権利を主張する。このようなことが当然のように行われる背景には大学間の序列があり、それがこれ程の意識・対応に差を生むのかと衝撃的だった。また、大学にとって文部省内の課の重要度にも明確な差があることも身をもって知った。

 結局、リストに載っていた中小大学に措置することになったが、この決定に対して「まさか自分のところに本当に措置されるとは思わかなかった。本当にありがたい。一層努力したい」との声が寄せられたが、このことからも当初の辞退は本心ではなかったことが分かる。
(なお、突然の主張をしてきた大規模大学からも特段の反応はなかった。ちなみに、対応に当たった大学職員はいずれも文部省(当時)からの出向者だ。)

 その後、国立大学は法人化され、文科省からは独立した組織となったのでこのようなことはなくなると思いたかったが、そうはならなかったことは後で明らかになる。

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