教育行政に関する事項ではないが、在職中の忘れられないエピソードを一つ紹介したい。
昔から「今の若者・日本人は…」という悲観論・批判は多かったし、最近は、世界の中での日本(人)の劣化、を論じる言説をよく耳にする。そういう面もあるのかもしれないが、そればかりではない、それとは反対の、世界の中でも特筆されるような素晴らしさが日本人にはあることを痛感する機会に遭遇した。
それは日本中を震撼させた東日本大震災が発生した日のことだ。都内の道路は渋滞し、鉄道はどれも運行を停止するなど交通機関は麻痺していた。残業終了時にようやく運転が一部再開した地下鉄を乗り継いで、何とか新宿駅までたどり着いたが、そこから先は途中駅からの運行が再開しただけだった。従って、そこまで歩いていくしかない。
こうして夜遅くに甲州街道をひたすら西に歩くことになったのだが、同じような行動をとる人が何人か目についた。お互い大変だなと思いながら歩いていると、街道沿いの家の方が歩道にテーブルを出し、その上に並べたおにぎりや飲料を配ってくれるではないか。それも一軒だけではない。誰に頼まれたわけでもないのに、「お疲れ様」「頑張って!」と声をかけながら、わざわざ飲食物を用意し、それを見ず知らずの人に無償で配る方が何人もいる。
思いもかけない対応に驚き、その行為に感動・感謝するとともに、「なんて優しい人たちなんだ。日本人はなんと素晴らしいんだ!」との思いをひしひしと感じたのを思い出す。
最近、日本をめぐる話題として暗いものが多いが、それらに触れる度にあの日の光景が思い出され、「大丈夫だ。あれが自然にできる日本(人)なら心配ない。」という気持ちが湧いてくる。

コメント