コロナが露わにした、専門家の機能不全

 社会が複雑化・高度化するにつれて、そこで発生する様々な事象も未曾有のものが多くなっている。過去の経験や記録が活かせないので、大半の者がそれらに対応するのに何を根拠にして良いか分からないでいるのも当然だ。結果、科学者や研究家と言った「専門家」に頼ることになる。今ではそのような人たちの顔を見ない日がない有様だ。

 ただし、彼ら/彼女たちの言動が一般の人たちの不安を解消し、行動の指針を与えるものとなっているかは甚だ疑問であり、むしろ不安を募らせていると言った方が良いのではないか。その原因として挙げられるのが「根拠の欠如」と「矛盾」だ。

 ここ数年、世界的な問題となった「コロナ」を例にしてみよう。

 先ずは、(今となっては懐かしい気もする程だが…)当初から感染防止対策として指摘された「3密」回避だ。

 ウイルスが付着しないことを前提に考えれば当然の事項だが、その際に関連して出された「接触8割減」は全く理解し難い。感染を早期に終息させるには人との接触を8割減らす必要があるとのことだが、具体的にどうすれば8割になるのかが全く不明だ。

 指摘を受けて厚労省は「人との接触を減らす10のポイント」という資料を公開したが、これを見ても人との接触を極力0にするよう求めることが記載されているだけで、8割という基準を満たすには何をどの程度減らす必要があるか、同じ項目内で何をどうすれば接触減が7割に留まることなく8割に達するのかが全く分からない。

 また、多くの人が通勤・出社を余儀なくさせられており、しかも大都市では皆、満員電車を利用せざるを得ない状況にあることを看過しておいて、一方的に在宅勤務を求めていても実行可能なのかと思わざるを得ない。少人数で、とされているスーパーへの来店等も同様だ。8割の根拠はシミュレーションの結果であるとされるが、どれほど現実に即した条件を勘案した設定が行われていたのか不明であり、これでは「机上の空論」と言われるのも仕方がないだろう。

 「外食人数・時間の制限」も納得がいかない。
 人が近距離で集まり、口からのウイルス拡散が起きやすい機会として外食がやり玉に挙げられた印象だ。そして「人数は4人まで」「時間は20時まで」「飲酒は抑制」が求められたが、これらの根拠が全く不明だ。4人までと5人以上、20時までとそれ以降、飲酒の有無で感染率にどの程度の有意な差があり、それは他の区分(5人までとそれ以上等)と比べてどれほど有効だとされているのか。それらが一切不明なままで一方的に営業自粛を求められた飲食店関係者の無念は想像するに余りある。

 さらに、感染対策としてのワクチンにも問題がある。米国で開発されたファイザーやモデルナ社製のワクチンが多くの国で認証され、多くの国民に接種されているのに、我が国では認証が遅れていた。特例措置として早期に認証され、接種されることになったが、そもそも認証に向けた国内での検証など必要だったのか。

 欧米人と日本人とでは異なる副作用等がありうるから、というのが理由なのだろうが、その一方で3回目の接種を推奨する根拠として示されていたのは、被験者に日本人が含まれていない米国やイスラエルにおける研究・臨床試験の結果であった。そのような海外での結果が有効だと認められるのであれば、ワクチンの認証も同様に行えるはずではなかったのか。見事なダブルスタンダードで、これでは新薬認証の必要性・有効性に疑念を持たざるを得ないだろう。

 また、オミクロン株の発生により、3回目接種が必要とされた際の対応も不可解極まりない。当初は2回目接種終了後から3回目までの期間が8か月以上必要だとされていたのに、それがやがて6か月以上あれば良いとされ、しかもその対応は自治体の判断によるという。8か月必要だとされた期間が短縮可とされた理由、短縮の可否が自治体の判断で可能だとする根拠が何も分からない。これで果たして副作用はないのか。その際の責任は自治体が負えるのか。謎は尽きない。

 そもそも、あれだけ「3密」の重要性を訴え続け、国民がそれに従っている中で、21年秋には新規感染者が記録的な数に達していたものが急速に終息に向かい、その年末には全国で二桁の感染者数を記録するに至ったのは何故なのか、一体何が効果的だったのか。反面、年が明けるや過去最高を記録するほど感染者が短期間で急増したのは何故なのか、その要因は何なのか、なぜ前年の対応が効果を挙げなくなったのか、肝心なことが全く分からないままだ。

 加えて、この間に新たに発生したオミクロン株についても、当初は「感染力は他のウイルスより強い」が「重症化しない」と言われていたのに、いつの間にかそのような発言は聞かれなくなった。実際、死者の数はそれほど少なくない。

 このように、一連の事態について「専門家」が何も根拠を明らかにすることなく、むしろ矛盾する発言を繰り返してきたことは明らかだ。こんな「専門家」などいらないし、むしろ有害ではないか。「専門家」と称する人たちはこの実態を良く認識し、その言動を改める必要があることは言うまでもない。

 また、マスコミも国民に正確で分かり易い情報を伝えるのが使命であるならば、安易に「専門家」という肩書に頼って見解を求めるのではなく、それがどういう科学的根拠に基づくものか、他者や、過去の発言と矛盾するところはないか等をしっかりと検証することが必要であろう。

 それなくしては返って国民の科学不信・報道不信を助長することとなり、結果、ネット上にあふれる誤情報を信じる人を増やすことになること、また、今後も同様の事態を生じさせ、さらなる混乱を招く可能性があることを真摯に危惧すべきであろう。

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